夏の空~彼の背中を追い掛けて~
司会者による開式の言葉が述べられ、読経·焼香·喪主の挨拶·そして閉式の言葉と共に告別式は終了となった。
だけど誰1人として、帰る者は居ない。
と言うのも、俊ちゃんと最後の別れをする為に皆残っていた。
啜り泣きが溢れる会場で、祭壇から静かに棺が降ろされる。
そして、そっと蓋が開けられると、皆次々に花を手向ける。
そんな中、私はクリスマスに渡せなかったプレゼントを、そっと手元に置いた。
『これからは、私と赤ちゃんの事、守ってね』
『俊ちゃんに出会った事、私一生忘れない』
「俊ちゃん、愛してる……。だからサヨナラは言わないからね」
今にも起きそうな穏やかな顔の俊ちゃんに、最後のお別れとして、唇にキスを落とした。
手に触れた頬はとっても冷たいのに、唇は驚く程柔らかい。
本当は生きてるんじゃないの?と錯覚し、まだまだ死を受け入れ切れない自分の心が大きく揺れる。
「俊ちゃん?そろそろ起きても良いんじゃない?」
「目開けようよ…」
私は大粒の涙を溢しながら冷たい手を握り、何度も揺すった。
「お願いだから…起きてよ」
「おはようって言って?」
「私を…置いて逝かないでよ……」
諦めの悪い私の肩を、誰かがそっと掴む。