夏の空~彼の背中を追い掛けて~
ゆっくり振り返った先には、私と同じようにボロボロと涙を流す紀香の姿があった。
「…泣いていたら…真弥が心配で…俊ちゃん旅立てないよ……」
「ヤダヤダ!私だけ…置いてきぼりなんて…ヤダ!!」
まるで聞き分けの無い駄々っ子のように言う私の頬に、鈍い痛みが走ると同時に、誰かに強い力で腕を引っ張られ、部屋の隅へと連れて行かれる。
「真弥!!いい加減にしなさい!」
怒りを抑え込んだ母の低い声に、ハッと我に返る。
「あんた母親になるんでしょ!?親が確りしなくてどうするの!!」
親……。
そうだ!私は親になるんだ。
いつまでも『嫌だ嫌だ』と駄々を捏ねてる分けにはいかない。
私は色々な思いと葛藤しながら溢れる涙を必死に堪え、俊ちゃんの傍へ戻ると棺に蓋がされ出棺となった。
『真弥さんも一緒に火葬場へ来ませんか?』とお義父さんが声を掛けてくれたけど、私はお断りした。
だって愛する人がお骨になって出て来るんだよ?
そんなの耐えられない。
私は俊ちゃんを乗せた霊柩車を見えなくなるまで見送り、両親と帰宅した。