夏の空~彼の背中を追い掛けて~


「本当はもっと早くに渡すべきだったんだけど、私自身も俊介の死を受け入れられなくて…。遅くなってごめんなさい」



お義母さんは深々と頭を下げた後、私の手にジュエリーケースをそっと乗せた。



えっ!?これは……?



良く分からないまま蓋を開けると、ハート型の小さいダイヤが付いたエンゲージリングが、キラキラと輝きを放つ。



「あの……えっと…」



驚きで上手く言葉を繋げられない私に、お義母さんが付け加えるように話を続ける。



「終業式の日、俊介が『大切な人へのプレゼント』と言って、買ってたそうよ」



えっ!?



終業式の日って……急遽、俊ちゃんが会う約束をキャンセルした日だ!



まさか指輪を買う為に?



「薄れ行く意識の中で、俊介は救急隊員の方に指輪を託したの…。私が病院へ着いた時に渡されたんだけど、気が動転してて…。ごめんなさい……」



あの日の光景を思い出したのか、お義母さんはハンカチで目頭を押さえる。



「それともう1つ……。これも真弥さんに…」



目に涙を滲ませたまま、お義母さんは鞄の中からシワシワの紙を取り出した。



それを受け取った私は、その内容に泣かずにはいられなかった。





< 332 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop