夏の空~彼の背中を追い掛けて~
ん……っ。
アレッ!?
俊ちゃん!?
辺りを見渡しても誰も居ない。
夢だったの?
だけど、本当に俊ちゃんと会話をしたように、心が暖かい。
霊感がある訳じゃないけど、約束通り傍に居てくれてるのが分かる。
だからこそ、メソメソしたくないし、笑って過ごしたい。
あれは不思議な体験としか言いようがないけど、この日を境に私は俊ちゃんの事で泣かなくなった。
そして3月3日。
私は卒業証書を手に、篠栗家のお墓へ向かった。
「俊ちゃん今日ね、卒業式だったの。ちゃんと証書貰えたよ?俊ちゃんも貰えた?」
私達の高校より2日早い3月1日。
○○工業の卒業式があった。
本来ならばそこに、出席していたはずの俊ちゃんは、誰よりも早く旅立ってしまった。
だけど弘晃君を中心に、何人もの生徒が“俊ちゃんに卒業証書をあげたい”“一緒に卒業式をしたい”と先生に掛け合い、席を用意してもらえたと孝道君が教えてくれた。
ポッカリと空席になっていた席には、弘晃君が持参した俊ちゃんの写真を置き、卒業証書はお義母さんが代理で受け取ったとの事。