愛される気持ちなんて私は知らない。
「昨日の使いかけのお肉が残ってるわ。もったいないから今日は家でご飯にしよう?」
「そんな節約家みたいなこと言うなよ、えくぼ。せっかく今日早く上がったんだ。お父さんとデート、したくないのか?」
意地悪そうな瞳で顏を覗いてくるお父さんに反抗出来ず、結局行きつけの洋食屋に行くことになってしまった。
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「いらっしゃい!ーあら?千秋とえくぼじゃない!久しぶりね。」
元気な声でハツラツとしているこの女性は徳永 恵美(とくなが えみ)さん。旦那さんの信(まこと)さんと二人でこの洋食屋ーdeliciousーをきりもりしている。
お父さんとは3人とも高校からの腐れ縁らしい。
「最近仕事が忙しかったからさ。久しぶりにえくぼとデートにでも行こうかと思って。」
お父さんは何の意味もなく言ったつもりだろうけど。私は緩みそうになる口角を引き締めるのが大変だ。
「全く。相変わらずの溺愛ぶりじゃない。ねえ、信?」
「ははっ。本当だな。これじゃえっちゃんはいつになっても嫁に行けないな。」
私をえっちゃんと呼ぶ信さん。男らしい顔つきにちょっとゴツすぎる体が特徴的。なんでも高校の時はラグビーに明け暮れていたのが、その体の原因らしい。
対照的に、恵美さんは小柄で可愛らしい。私も153㎝で小さい方だけど、恵美さんは145㎝もないんじゃないかな..。本人は150㎝と言いはってるけど。
二人ともとっても仲良くて、優しい人達だ。