愛される気持ちなんて私は知らない。



「それよりお父さん、今帰り?」


グレイのスーツに身を包み、パソコンケースを片手に持つお父さんは今年38歳。まだ20代でも通用しそうな出で立ちである。



「ああ。たった今帰ってきたところ。」


「お疲れ様。晩御飯、何にしよっか。」


「久しぶりに外食にでも行こうか?」


そう言うと、思った。


お父さんは今日のように仕事が早めに終わる日は外食したがる。いつも家事をこなす私への配慮でもあるんだろうけど。

私はお父さんと二人で外食に行くのは苦手。



―――恋人同士にでもなったような錯覚に陥って苦しくなるから。



でもやっぱり、19の私と38のお父さんが並ぶと、恋人同士とは呼びにくい風貌。


お父さんは若く見られる。
しかし私も所謂童顔で、中学生に見られてしまうこともある。



良く言えば、親子。
悪く言うと、援助交際。


おそらく後者の意見が過半数を占めるだろう。




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