【短編】死者は黙して語らず
トイレの中が騒がしくなった。


ドン、と個室のドアが揺れ、思わず亮介は身構える。



どうやら男同士の喧嘩らしい。


やめてください、という小さな声と

何かを殴る音。



いたたまれなくなって亮介がドアを開けると、

洗面台の前に体格のいい男と青白い顔の男がいた。



一瞬、青白い顔の男と目が合った。

死んだ魚のような、ドロリとした目。


あわてて目を背けると、亮介はトイレを後にした。


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