肩越しの景色
少しの疑問を抱えながら

指定した教室まで向かう。

中を覗くと窓際の真ん中位の席で

前の授業の教科書を机に仕舞う彼女が居た。

その前に居るクラスメートに肩をたたかれ

こちらに顔を向ける。

一瞬、引き気味な表情をみせた後

静かにこちらに足を進める。



「あの...」

『うん、移動しようか』

目聡い女子たちが騒ぎ始める。

(何で?)

(どうして?)

の声を後ろに聞きながら

たまに、昼寝をしにいく中庭まで

誘導する。

あまり人が寄り付かない俺の中の穴場。

邪魔されたくない”お一人様空間”に

何故連れて来てしまったのか...

疑問が浮かんでもすぐ打ち消した。


ひとつだけ置かれた古びたベンチに座る。

『座れば?』

所在無さげに立つ彼女に声を掛けると、

ゆっくりと、少しの距離を空けて腰を下ろす。
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