薔薇の花嫁
夜
部屋で本を読んでると
「…アナベル…アナベル…」
誰かが呼んでる。
「だ、誰?私を呼ぶのは」
「アナベル…」
薔薇の薫りと共に声が…
その声に導かれるように庭へ
東屋には
「また逢えたね」
「貴方は…ギデオン」
「そう、よく憶えてくれていた」
私の手を掴み座らせる。
「貴方は誰?何者なの?どうして此処へ」
「私は私だ。それ以上でも以下でもない」
私の顔を指が優しく這う。
目は彼の瞳に吸い寄せられるように。
「アナベル」
耳元で
「君は私のものだ。永遠(とわ)に」
また催眠術にかかったみたいに動けない。
「君にプレゼントだ」
彼が差し出したのは青い薔薇
「…綺麗 あっ!」
受け取った途端、薔薇の棘が指に
血が…
「刺したのか」
彼は私の指を取って…口に
「甘い。アナベルの血は極上のワインに匹敵する」
「あっ!」
再び口に。
彼が傷口を吸うと何だかゾクゾクして不思議な気持ちになる。
「感じてるね。ますます甘くなる」
「ギ、ギデオン」
彼が指を放し
「花びらが紅く燃えている」
痣に口づけを。
「あっ!」
今、何か…
「アナベル…可愛い人」
唇に口づけを。