薔薇の花嫁
「どうしたアナベル。そんなに私を見つめて」
「貴方は誰?」
もう一度聞く。
彼は私の手を取り東屋の椅子に座らせ
「アナベル…君は美しい」
「えっ?」
「本当に綺麗になった。私は待ってたんだよ、この日が来るのを」
「……」
この人は一体何を言ってるんだろう。
「この月明かりを集めたような銀髪。菫の花のような瞳。雪のような肌。真紅の薔薇のような唇…
君こそ私に相応しい」
この人の話しを聞いてると何故か心地よく
「君は私を憶えていないか?」
「…何処かで会ったような気も」
「まだ君はホンの子供だった。この庭で薔薇を嬉しそうに見ていた」
子供の頃に…
「じゃあ貴方は家の誰かのお友達?」
「君は薔薇の棘で指を傷つけ私が」
「手当てをして下さったの?」
彼は妖しく微笑み
「君を私の花嫁に迎えることに決めた」
「えっ?…は、花嫁?だ、誰が?誰の?」
話しが見えない。
「君は私の花嫁に」
「……」
この人…おかしいの?
「君はあの時に承諾したんだよ」
「えっ?」
あの時って…
「棘を刺した時…あの時に君は私の花嫁になると。君の首に花びらの痣があるだろう」
「えっ?」