今年の本10冊
 なんだか、最初から、そうだった。ずっと「見つかりませんように。捕まりませんように」と祈りながら読んでいた。子どもを生んだことのない二十代半ばの女性が、こんなに子どものことを愛せるのだろうか、私はそうではなかった、と自分が子どもを産んだ時のことを思い出しながら最初は読んでいた。
 そして、親子で(血のつながった本当の親子ではないが)こんなに濃密な時間が持てていることにうらやましさを覚えた。
 あぁ、そうだ。私は、この家の跡取りを生んだお手伝いなのだ、と不意に昔に流した悔し涙のことを思い出した。
「私が子どもの面倒を見ておくから、あなたは家の用事をしなさい。その方が楽でしょう」そう言われた時の悔しさ、情けなさを思い出した。
義父と伯母が子どもを連れて出かける。私は家に残って家事をする。掃除、洗濯、家の散歩、買い物…。
胸が張ってきて痛くなった。お乳の時間だけれど、帰ってこない。ミルクのセットを持っていったので、きっと今頃飲ませているんだろう。
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