22歳で逝ったあなたへ
『手とか触ってあげて。きっと聞こえてるから何か声かけてあげて』
おばさんは、泣きながらそう言った。


『笠井、笠井、ねぇあたしの声聞こえる?ねぇなんで?しっかりしてよ!あんたさぁあたしの結婚式来るんでしょ!余興するんでしょ!ねぇ起きてよ…手…握り返してよ…』
私の涙が笠井の手に何粒も何粒も落ちていった。


短い面会時間は、それで終わった。
最後にかける言葉がアレでよかったのか、いまだにわからない…

ただ、笠井の手はすごく、あったかくて命を感じたよ。

もっと触っていたかった。

面会が終わり、私達は、ただただロビーで待っていた。
笠井の意識が戻るのを…

時計の針は昼の12時をまわろうとしていた。

病院に、こんだけみんなで待ってても仕方ないから仕事がある奴は、いったん会社に戻ろうと、誰かが言った。

私はこんな状態で、仕事ができるか不安だったけど、今、私がここにいても、出来る事は何もなくて…
会社に戻るしかなかった。
信じるしかなかった。

私は、なおとタクシーで会社に戻った。
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