君だけに
タイトル未編集
丸い襟の下に、
ふわふわのスカートの裾に、
先の丸いパンプスのリボンのわっかに、
彼女は春の甘い風をたっぷりと含ませてきた。
ファミレスに入ってすぐ、目線が客席を1往復。
少し不安げな顔になってから、もう1度目の途中で俺に気づいて、目を丸くしてからにっこり笑った。
「絶対わざとだ」
西野夕香は笑いながら、バッグをソファーの奥に置いて俺の前に座った。
「何が?」
「スーツならそう言ってくれればいいのに。探したよ」
「ごめん」
謝りつつも、西野の驚く顔が見られた俺は満足。
「悪いって思ってないでしょ」
当たり。その通りです。
もう、なんてぶつぶつ言いつつも、
「でも似合うね」
と笑ってくれるから、朝から舞い上がりそうな気分だ。