君だけに
「出勤前にごめんな」
「ううん。夜は遅くなるからちょうどいいよ。こっちこそ、お休みの日に早起きさせてごめんね」
誰に対しても気遣いができるのは、彼女の魅力の1つだ。
彼女といて嫌な気分になるやつなんて、この世にいないんじゃないかと思う。
そんなだから俺も、まず西野に話してみようと思ったんだ。きっと。
「実は、相談があって」
「うん」
彼女は回していたスプーンを置いてカップから手を離した。
そして、神妙な面持ちで俺を見つめる。
「いや。そんなかしこまってもらわなくていいんだけど」
そんなふうにされると、なんだか怖じけづきそうになってしまう。
ほんと格好悪いんだけど。