Adagio
どうしようもなく救いのない気持ちを抱いて膝を抱えていると、段々まぶたが重くなってきた。
そのまま重力に任せようとした所で、思わぬ邪魔が入る。
「あれ、北浜くんじゃないか」
「っ泉水先生…!?」
先生と自分の服装を見比べてハッと我に返る。
曲がりなりにも俺は優等生のフリをしているのに、こんな所でサボっているなんてばれたら何を言われることか。
「あの、俺は今から先生に頼まれた資料を取りに行く途中で…」
俺が必死でぎこちなく繋いだ嘘を、彼は笑い飛ばして終わりにした。
「はは!こっちは資料室と逆方向だって言うのに、どこに資料を取りに行くつもりなんだい?」
しまった…!
乱れそうになる呼吸を必死で抑えている俺に、先生は軽やかに笑う。
「嘘を付くのが下手だね、北浜くん」