Adagio
「わっかんねぇよ…」
これが良い立ち直り方だとわかっていたら苦労はしない。
こんなにうだうだ悩むことも無かっただろう。
屋上まではあと少しなのに、鍵のかかったドアがあと少しの距離を阻む。
今の俺もまさにそういう状況なのかもしれない。
うだうだぐだぐだ、もうたくさんだ。
こういう自分が嫌いで早く抜け出したくてピアノから離れたのに、これじゃあ一緒じゃないか。
何をすれば抜け出せる。
何をしたら楽になる。
重力に任せて落ちていくまぶたは、熱のこもる空気から逃げるように視界を遮断した。