Adagio


かわいい弟に責任を負わせたくなかったらな!

さっきとは打って変わって明るい調子でそう言って、浅葱が笑う。


「…やめるつもりは無いけどな」

「そっか。最近兄貴が元気無さそうだったから心配してた」

もし元気が無かったのがお前のせいだと言ったら、こいつはどんな顔をするだろうか。

だけどそんなこと、言えるはずもなく。

「やめないよ」


そう呟くと、浅葱は至極うれしそうに微笑んだ。

俺の心を見透かしてはっきりと差しだされた言葉は俺にとって救いであり、傷をえぐるものでもあった。

「そろそろ本気で練習するから、出て行ってくれるか?」

「りょーかい。コンクール3カ月後だって?絶対見に行くからな」


誰と?
そんなもの、聞かなくても明白だった。

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