Adagio
家に帰っていくら考えてみても、泉水先生の言っていたことはさっぱり理解できなかった。
俺の中で子どもらしさは下手に繋がっている。
子どもらしいとは、感情をそのまま曲に反映させることだ。
それは悲しい曲を楽しそうに弾く浅葱の演奏や、テンポが崩れがちな奏の演奏に似ている。
だけど泉水先生はそれが俺に必要だと言った。
「あぁーくそ…っ」
苛立って舌打ちした所に、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「兄貴!ちょっといいか!?」
返事をする間もなく浅葱が慌ただしく入って来て、ベッドの上に何着か服を並べる。
「どれが一番俺に似合うと思う?」
下はカーキ色のワークパンツ、細身のジーンズからサルエルパンツ。
上はパーカー、カーディガン、カッターシャツまで。
本当に何でもありだった。
この中から選べって?