Adagio
チカチカして目に悪そうな配色の髪を指で巻き取りながら奏が歯を見せて笑う。
「アタシねー、今日は珍しく早起きしたんだよ!すごくね?ヤっバいよね」
「その髪」
「ん?」
カフェオレ色にはどう見ても合わない、蛍光色のメッシュたち。
「その髪、どうしたんだよ」
猫みたいな目をくるりと丸くして、けれど一瞬でいつもの肉食獣みたいなギラギラした目に戻る。
ラインストーンを散りばめた黒いネイルが、ファンデーションで塗り固めた白い頬に添えられる。
「彼氏とオソロにしてみたんだぁ。かわいいっしょ」
「前の方がよかった」
口に出してからハッと我に返る。
何を言っているんだろう。
奏と奏の彼氏なんて、別に関係無いじゃないか。
だから奏がどんな髪にしてきたって、何か言う必要もないだろう?