Adagio
「…ふぅん?」
挑戦的な鋭い視線が俺を射る。
どこか満足そうに、どこか楽しげに。
あぁまただ。
また、イライラする。
「大体なんでお前、いっつもそんな不真面目な格好…」
言っておくけれど、四葉高はそんなに簡単に入れる高校じゃない。
県内では有数の音楽科がある高校だし、ここ出身のピアニストだって少なくない。
地方のメディアにだって度々取り上げられるからそんな学校に不良をのさばらせておくわけにはいかないと、服装検査はキッチリやる方だ。
だからそんな中にいる校則違反者はとても目立つ。
けれどすべて言い終わる前に、いつも通りメイクの濃い顔が眼前まで迫って来た。
「アタシ知ってんだよ?」
言いながら緩められたネクタイ。
「…っ!」