恋愛模様【短編】
「あれっ、玲?」

補欠組のひとりが、帰っていく玲に気づいてマネージャーのミナに尋ねてきた。

「あ、うんっ」


ミナは、
そっとタオルを渡す。

「サンキュっ。

玲、もう帰ったの?」


「うん。

練習してよっ、て言いたいんだけどね」

ミナは苦笑いをする。

「腕のケガ、
まだ悪いの?」


「う~ん、どうなんだろう…
本人は、まぁねとしか言わなかった」

「そっか。

マネージャーも心配ですなぁ~」


ミナは、
そっと微笑む。


「でも、
双子の名場面が見れないのは残念だなぁ」


「また見れるわよ、

みんな、期待してるもんっ」


「うん。

だね。

人なつっこいハルと、
無愛想な玲。

双子なのに、
性格は全然違くて、
でも、
野球になると、ぴったりと息が合ってた二人」


「性格ね、似てるところあるんだよ」


「そうなの?」


「うん。

完璧主義の負けず嫌い」


「あぁ~なるほどっ。
わかるわかるっ」


「でしょっ。

今は、すねてるだけ。

スポーツにケガはつきものなのに、
ケガした自分は、
ハンディがあると思ってる。

完璧主義だから、
思うように動かない腕に落ち込んでるだけ。

玲くんは、
戻ってくるわ。

だって、

ライバルのハルが、
マウンドに立ってるんだもん。

もうすぐ

負けず嫌いが目を覚ますっ」


ミナは、

赤い夕日を見上げた。
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