恋愛模様【短編】
百合華は、
演劇部に向かっていたものの、
金網ごしの
さっきの二人の後ろ姿が忘れられなくて、

一人でなんだか落ち込んでしまい…


― 気がすすまない…

…今日は帰ろう… ―


と、再び下駄箱へUターンした。


沈んだ心境のまま
下駄箱に着く。


― はぁ…

私、どうしちゃったのだろう… ―



百合華は、
静かに靴を履き替えた。


トン パタンっ



― ん? ―


人の気配がなかった下駄箱で
すぐ近くで音がしたので、
百合華はびっくりして振り返った。



「あ、矢崎くん…
ハッ」

口に出して呼んでしまった自分に、
思わず百合華は自分の口をふさいだ。


「え?

………
あぁ、今日、転校してきた、…えっと~」


「泉ですっ、泉 百合華っ」


慌てて名前を言いながら、
百合華は、
自分のことを思い出してくれるんじゃないかと期待した。


「あぁ。泉さんね」


「う、うん」


― あれ… ―


そらぞらしい矢崎の態度に、
妙な感覚を覚える。


― 名前聞いて、
何か思わないの?… ―


「あのー…」

「何」

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