エリのミカタ
タイトル未編集

私はエリ。17歳。都内のアパートに母親と母親の彼氏と3人で住んでる。高校へは行ってない。友達もいない。
36歳の母親は今妊娠していて、家事を一切しない。まぁ元々しないんだけど・・
家事は一切しないくせに毎日大きなお腹を突き出してパチンコに行く。彼氏と一緒の時もあるし、そうじゃない時もある。2人で出掛けてくれれば私はホッとするんだけど、その間にも家事や雑用を全部やらないといけない。2人より早く起きてゴミを出し、食事の仕度。食べ終わればテーブルに置きっぱなしにされた食器を片付け、洗濯、掃除と。
しなければ殴られるし蹴られるし、部屋に閉じ込められて何も食べさせてもらえない。
毎日母親の彼氏にお金を渡される。大体2千円か3千円。そのお金で食料や酒を買う。酒が切れると大変。これまた殴られる。殴るのは男の方。母親は止めもしなければ呷りもしない。私が暴力を振るわれてるのを横目にお菓子を食べながらTVを見てる。全く、私に興味が無いとしか思えない。私、あなたの実の娘なんですけどw
私が中2の時、実の父親と母親は離婚した。実の父親は穏やかで優しい人だったけど、身体が弱くて入退院を繰り返していた。そのせいで生活は苦しかった。母はいつの間にか夜の仕事をするようになり、朝酔っ払って帰って来て、昼過ぎまでずっと寝ている、そんな生活をしていた。
私は近所だった父方の祖母の家で学校以外のほとんどの時間を過ごしていた。祖母は元々教師をしていた人で、芯が強く上品で優しかった。祖父はだいぶ前に他界したらしく、あまり話を聞いたことはない。
祖母は優しかったけれど、やっぱり母のことが気に入らないみたいで当時の私によく愚痴をこぼしていた。
「夫の看病もしない子供の面倒もみない母親がどこにいる。働いて稼いでるって言ったって夜の仕事じゃないか。何をしてるか分かったもんじゃないよ。光雄(私の実父)が可哀想で可哀想で。結婚なんてさせるんじゃなかったよ。」
私にはただ黙って頷くしか出来なかった。母親を否定することも、父親の病気を嘆くことも、なんだか無意味に思えてしまった。せめて私が生まれていなければ、祖母の苦労も少しは減ったかもしれない、なんてぼやっと思ったりしていた。
それでも、朝起きて、祖母の作ってくれた朝食を食べて学校へ行って友達と騒いで部活をやって、家に帰って夕飯を食べてTVを観て・・・とまぁ普通の、人並みの生活が送れていた。
あの頃は幸せだった。というか普通だった。
普通なことが普通じゃないって知ることになるなんてね。
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