恋愛上等 あんたなんか大っ嫌い

「出席をとるぞー」

先生が順に名前を呼ぶ。

「えー、花錐」
「はい」

返事をすると先生がこっちを見た。
するとすごく驚いた顔をした。

「…花錐か?」

「はい、そうですけど;」

やっぱりわかんなかったか;
だいぶ違うんだな。

「そ、そうか」

戸惑いつつも、次の人の名前を呼ぶ。

隣でかすかな笑い声が聞こえた。
…一条怜架だ。

「…なんだ?」

「いや、口調も変わるんだなって思って」

あぁ、そういえば変わってたな。
なんか、まじめじゃないといけないとかがなくて、気が抜けるからなー。
いつもの口調に戻るんだろう。

「丁寧に喋るの面倒くせぇし?」

「へー。なんか、残念だなー」

「なんでだ?」

「んー、自分だけが素顔を知っていたいみたいな気分かな」

それって……

体が熱くなっていく。
絶対顔赤くなってる。

「からかうなっバカ!」

顔がなぜ赤くなるのかわからない。
今までならこんなこと、無視できた。
なのに……。

赤くなって、まるで……

「なんでだよっ」

小さい声でつぶやく。

なんかイライラする!
よくわからない。もう嫌だ!

唇をかみしめるとガリっと小さく音がした。
口の中に血の味が広がる。

「やべっ、唇切った」

強く噛みすぎた。
静かに席を立って教室をでた。

怜架が何か言ったような気がしたが気のせいだ。
そう思うしかなかった。
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