恋愛上等 あんたなんか大っ嫌い
保健室は好きじゃない。
薬品のにおいが鼻を刺す。
「まったく、めったに保健室へ来ない美影さんが来たと思えば唇を切ったなんて」
呆れたように涼音が言った。
「ちょっと考え事を…」
「噛みすぎて切るほどですか?」
うっ;
言葉が詰まる。
「悩み事、聞きますよ?でないと、私のいる意味がないですからね」
「…おまえの役目は私を守ることだろ;」
「いいえ、心のケアもです」
そういえば、小さいころから悩み事を聞いてくれていたのは涼音だった。
ほんとに些細なことでも…。
「なぁ、私どうしたんだろう」
今までなかった、よくわからない感情が怜架に対して生まれた。
怜架とあって、まだ数日しかたっていないのに…。
この気持ちがなんなのかわからない。
どうしたらいいかも。
怜架といると楽しいと感じる自分がいて、怜架がほかの女子と話しているのを見ると少しムカつく。
見ないふりをしていた。
「なんなんだよ…」
「…美影さん、無理しなくていいと思いますよ」
「だけどっ!知りたい…」
「……必ずしも、そうとは限りませんが…」
「なんだよ!早く教えろ!」
「はぁー……恋ですよ」
ドックン、ドックン
大きく心臓がなる。呼吸が苦しくなる。
「こ、い…」
前にもこんな気持ち……
「うっ…うぇっ」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
めまいがする。
吐き気とひどい頭痛に襲われ、呼吸がうまくできない。
遠くで涼音の声がする。
「…霧島…零」
そういって意識を手放した。