誠姫
「父様・・・・?」
あまりの静けさに、異常を感じ、まだかと姫芽は瞼を開いた。
瞬間、自分の目を疑った。
未だ暗いそこは何故か月明かりに照らされており、視界には草木が確認できた。
同時に風の音、そして虫の声が耳に入る。
それらが外に居ることを理解させた。
あんなにも沢山集まっていた人は居なく、孤独を感じた。
「父様・・・?母様・・・?」
突然の情況に混乱しつつ、サプライズということでどこかに隠れているのではないかと一応名前を呼んでみる。
だが、返事が返ってくる気配は微塵も無く、不安が煽る。
「みんな・・・どこなの?悠?出てきなさいよ。居るんでしょう?」
そう言うが、誰かが近くにいる気配すら無い。
「サ、サプライズと言ってもあんまりだわ。父様、何をしたいの?いつの間に外に連れ出したの?ねぇ、早く出てきなさい。もういいから。充分サプライズだわ!もう驚いたから!!」
姫芽の言葉はだんだんとこの状況を認めたくないという現実逃避と化されていく。
「嘘でしょう・・・どういうことなの?」
まるで一人だけ違う世界に飛ばされたかのように、どれだけ待っても返事はなかった。
とりあえず同じ場所に居ても仕方が無いと、姫芽はでたらめに足を進めた。