誠姫
「おぉ君が総司が連れて来たという女の子かね?」
入ってすぐそう聞かれ、だが総司とは誰のことなのか、自分は連れて来られたのか、何も知らない姫芽は返事も出来ずに顔を歪めた。
「ったく・・・また厄介なもん拾ってきて・・・」
ポニーテールの男がため息と共にそんな言葉を吐く。
そして、ニコニコとした表情を崩さず答えた男は、どうやら名は総司というのだろう。
「やだなあ土方さん。僕は倒れた女の子を見捨てることが出来なかった善人なんですよ」
「あぁ?誰が善人だって?」
眉間の皺の減らないこのポニーテールはきっと土方と、姫芽の頭がどんどん整理されていく。
それにしてもくだらない会話だ。
さっきまで感じていた恐れはなくなった。
早くこの状況を説明して欲しい。
「とにかくだなっ」
土方がゴホンと一つ咳払いをし、改めて姫芽へと目をやった。
「お前、名は何と言う。何故真夜中にあんな所に居た」
その一言だけでも姫芽は聞きたいことが山ほど浮かぶが、まずはと対抗するように土方を思いっきり睨んだ。
「人の名前を聞く前に、まずは自分から名乗るのが常識でしょう」
強気の口調。
だが、土方は姫芽の発言が気に食わなかったのか、「あぁ?」と聞き返すように身を乗り出した。
それを近藤が止める。