誠姫
「昨夜、君が桜の木の下に居たから、何してるの?って聞いたら倒れたんだよ」
柱に寄りかかるようにして背中を預け、沖田は言った。
その言葉に、姫芽は昨晩のことをつぶさに頭に思い浮かべた。
「あぁ・・・あの時私に声を掛けたのって貴方だったんだ・・・確かに記憶がそこまでしかないわ。私、気を失ったのね。でもあれは仕方ないわよ!貴方突然その腰の刀を私に向けてきたでしょう!?そんなことされたの初めてだったから驚くに決まってるじゃない!!ていうか、貴方達ね!!そんな物騒なもん当たり前のように持ち歩いてて、銃刀法違反で捕まらないわけ!?」
一人言を言ったかと思うと、突然荒ぶる姫芽。
そして返事を待とうと落ち着いた瞬間、土方がこれまたため息と同様の声を出した。
「武士が刀を持っていて何が悪い。聞きたいことは山ほどあるんだ。無駄な話をするな。早く何故あんなところに居たのか答えろ」
「はあ!?アンタ誰にもの言ってるか分かってるの!?こっちだって聞きたいこと山以上あるわよ!!」
反撃として声を張り上げるが、土方には一滴の効果なし。
「いいからさっさと答えろ」
「だから分かんないわよ!!自分でもどうして私があんなところに居たのか!!」
「どういうこと?」
荒々しい会話の中、沖田の少し高い声が入り込む。
「だから・・・分からないの。気付いたらそこに居たんだもん。」
「お前、異国の者か・・・?」
土方の深刻な表情が目に映る。