誠姫
こんなに馬鹿にされたのは初めてだ。
ずっと箱入り娘として育てられてきた姫芽にとっては、こんな仕打ち屈辱だった。
勝ち誇ったような笑みに苛立ちを感じながら、もうヤケクソに声を張り上げた。
「あぁすみませんでした!!どうせ無知な女ですよ!!新撰組も何も知りませんよ!!」
その言葉に、土方より先に沖田が反応を見せた。
「新撰組、知らないの?」
「え・・・・」
予想外の人物に戸惑いながらも、独り言のようにまたボソボソと説明を始めた。
「べ、別に知らない訳じゃないけど・・・名前聞いたことある程度で・・・だって中学の歴史の授業でちらっと教科書に出てたわけだし・・・別に歴史に興味あるわけでもないから自ら調べたりなんてしないわ。それにもう習ったのも昔のことで、いつの時代の出来事だったかなんて覚えてないわ」
「ちょっと待て」
今の発言に違和感を覚えた土方が、顔を歪ませながら口を開いた。
「なぜ歴史となる」
「は?」
「だから、何故新撰組が既に歴史とされている」
「な、何を言っているの?」
意味が分からないと首を傾げるが、土方の表情は真剣そのものだった。