誠姫



「元はと言えばてめーが連れてきたんだ」



「はいはい」



意味深な笑みを浮かべ、立ち上がる。



そして、聞こえない程度に呟いた。



「心配ならそう言えばいいのに」



だが土方の耳には届いていた。



「あぁ!?何か言ったか!?」



「いえ、何も」



その後クスクスと小さな笑い声が聞こえる。



土方はチッと舌打ちを漏らし、怒鳴るように指示を出した。



「二番隊と十番隊は今から巡察だよな?アイツが居そうな場所を廻れ。斎藤は屯所付近。近藤さんはここに残ってくれ」




「へーい」



「承知しました」



「うむ。分かった」



あらゆる方向から聞こえる返事は十人十色。



土方はため息と共に立ち上がり、屯所を出た。




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