誠姫



目の前に広がる大きな桜の木。



この時代に来て、初めて見たもの・・・・



姫芽は吸い寄せられるようにその桜の木に近づいた。



瞬間、足の踏み場が変わった。



証拠にザッという自分の足音が耳に入る。



驚き足を上げ、目線を下へと変える。




「わぁ・・・・」



小さく、言葉にならない感動。



そこには、散った桜の花びらが辺り一面に広がっていた。




ピンク色の絨毯のように。



初めて見る光景に、目を奪われた。



姫芽がいつも見ていた桜は、満開の桜で、散ってしまったものなんて見たことがなかったのだ。



「知らなかった・・・・」



“こんなに綺麗だなんて”



心の中でそう続けた。




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