誠姫
声を確認したわけでも無いのに、姫芽はそう決めつけ、駆け出した。
「父様っ!!」
声と共に扉は開き、それは裏切ることなく西園寺家当主の姿が2人の目に映った。
「父様、おはようございます。どうかしらこの格好。今年は去年より気合を入れてみたの」
まるで美しい蝶のようにドレスを浮かせ、一回転して全体を見せる。
「おはよう姫芽」
そして「流石私の娘、綺麗だ」なんて言った。
「だが・・・・」
突然の否定の言葉に姫芽の満面の笑みが不安な表情へと変わっていく。
「今年の誕生日は制服で行うことになっている・・・・」
少々言いにくそうに申し訳ないという顔をする父に、姫芽は声無く「えー」という口の形をしてみせた。
流石の悠もその事実には少し驚いているようだ。
「どうして?いつもは綺麗なドレスだったじゃない」
そう大きな声を出す姫芽を、真剣な顔で説得の言葉をかけた。
「誕生日パーティーと言えど、学校行事。学校では制服が基本だろう?だから、今年からは制服でのパーティーだ」