誠姫
「他に手段はない」
「え?」
姫芽の頭には車やヘリコプターが浮かんだが、すぐにここは古い古い江戸時代だったと気付かされた。
「どのくらい歩くの?」
「すぐだ」
と言うも、屯所を出て10分、20分経っても目的地に着く気配がない。
正直、大金持ちで超過保護に育てられてきた姫芽としては、買い物だけのためにこんなにも長い距離を歩くのは初めてだった。
「まだなの?」
「すぐだ」
それしか言わない斎藤の後ろで、姫芽は頬を膨らませる。
「もう疲れたわ。歩きたくない」