誠姫



「他に手段はない」



「え?」



姫芽の頭には車やヘリコプターが浮かんだが、すぐにここは古い古い江戸時代だったと気付かされた。



「どのくらい歩くの?」



「すぐだ」



と言うも、屯所を出て10分、20分経っても目的地に着く気配がない。



正直、大金持ちで超過保護に育てられてきた姫芽としては、買い物だけのためにこんなにも長い距離を歩くのは初めてだった。




「まだなの?」

「すぐだ」



それしか言わない斎藤の後ろで、姫芽は頬を膨らませる。




「もう疲れたわ。歩きたくない」




< 45 / 74 >

この作品をシェア

pagetop