誠姫
言ってワガママなお姫様はふいっと顔を背け、立ち止まった。
そんな姫芽に斎藤はため息とも取れるような、面倒そうに息を吐き、斜め後ろへと首を回す。
そして、
「あそこの甘味屋まで歩けるか?ここでは人の邪魔になってしまう。入るぞ」
斎藤の目線の先にある甘味屋はもちろん古い木造建築で、店の前には赤い布が掛けられたベンチがあり、おまけにパラソルまで立ててあった。
次第に姫芽の表情が明るくなる。
まるで大好きな絵本を見つけたような子どものように。
「やるじゃない斎藤!」
言って歩けないと言っていた足を陽気に跳ねさせ、早々に甘味屋へ入った。