誠姫
「ちょっと何なのよっ」
姫芽の抵抗などお構いなしに、着付けはどんどん進められていく。
「あれは嫌これは嫌で結局自分で選んでるしさっあんなテキトウに手に取ったってのをどうしてあたしが着なきゃなんないのよ」
ぶつぶつ文句を言う姫芽の言葉はもはや独り言。
主人は帯をきつくきつく締めながら、「まぁまぁ」と声を絞り出す。
「ほら、良く見てみな。良い着物じゃないか」
背中をぽんと軽く叩かれ、鏡に映る自分を見つめた。
水色の生地に、白い桜模様。
まるで・・・・・
「あんたたち新撰組の羽織と同じ色合いだね」
鏡越しで主人のやわらかい表情が目に入った。
「べ、別にあたし何でも良かったし・・・・」
小さく言った姫芽の顔は、少しばかりほころんでいた。