誠姫
だが、土方の仕事の邪魔をしないようにと、斎藤が無理に姫芽を動かす。
「ちょっちょっと!!」
全身密着の状態で進む斎藤に文句を言うにも言えず、姫芽は土方の部屋から強制撤退された。
「もうっ本当ここの人は私の扱いがひどいわ」
「戻ってろと言ったのは副長、これは副長命令だ」
「その真面目すぎる顔、どうにかして欲しいわ」
姫芽はため息と共に畳へと視線を落とした。
「それでは俺はこれで」
襖の閉まる音がかすかに聞こえ、斎藤の気配は消えた。
斎藤は表情があまり変わらない。
姫芽の付き人である悠もだったが、悠にはどこか柔らかいものがあった。
固く、人を寄せ付けない空気を持つ斎藤は、姫芽にとって少し厄介な存在となった。
だが、他にも厄介者がこの屯所内に居ることを、姫芽はまだ知らない。