誠姫
悲しく笑い、ここに悠が居ないことを実感した。
夜風が当たり、姫芽の体を尽く冷やす。
体を震えさせるも、その体が風に当たりたいと中に入ることをしない。
姫芽は縁側に腰を下ろし、大きく丸い月を見上げた。
昔、聞いたことがある。
父と母の帰りが遅いのにも関わらず、眠らずに待っておくと言い張って、ずっと月を見つめて時間を流していた時だった。
仕方なくそんな姫芽に付き合った悠がうんちくを語ってくれた。
『お嬢様、知っていますか?月は毎年少しずつ地球から離れていっているんです。つまり、お嬢様が大きくなった時にまた見る月は今より小さく見えるんです。今のうちに、大きな月を良く見ておきましょう』
そんな言葉を、思い出した。
だけど今見える月は、あの日みた月よりもすごく近くて、大きい。
「悠の嘘つき・・・」
姫芽は膝を抱えて丸くなった。
そして、涙が零れそうになった時だった。
「姫芽?」