誠姫



「納得いかない優しさだわ・・・」



命令口調で話されるのに慣れていない姫芽は口をへの字に曲げながらも、土方からの羽織を握り締め、寒さをしのいだ。



さっきまで閉まっていた土方の部屋の襖は全開になっており、まだ仕事をする土方から姫芽の様子が見えるようになっていた。



そんな中、虫たちの声に混じって姫芽が口を開いた。



「知らなかったわ・・・月がこんなにも明るいなんて」



その声はもちろん土方の耳にも届いているわけで、一旦筆を持つ手を止め、何かを考えたのかまた再び動きだした。




「・・・・もう部屋に戻れ」




言う土方の背中を見つめ、姫芽は悲しく眉を下げた。



「嫌よ」




「もう遅い。寝ろ」




「眠れないって言ったでしょう」




「目を閉じてればいつか寝てる」




「嫌よ、そんな淋しい眠り方。だったら貴方が私が眠るまで側に居てよ」




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