誠姫
お姫様の花嫁修業
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始終、いたずらに降り注ぐ雨が耳障りなほど音を鳴らし、地を湿らせ、屯所内をどんよりとさせる。
姫芽がトリップして早二ヶ月、だいぶ着物にも慣れてきた頃、梅雨の季節に入った。
「土方、今日も雨よ」
「あぁ、そうだな」
「・・・・土方、雨はいつ止むの?」
「あぁ、そうだな」
「・・・・・・・・つまらない人」
仕事をしながらの生返事に姫芽は不満そうに再び中庭に降り続く雨に目線を変えた。
「暇ね・・・貴方のせいでいつまでたっても外へ出られないわ」
雨に向かってそう文句を吐くが、もやもやは解消されない。
何日も太陽の光はなく湿気まみれが続けば、姫芽のイライラも募るばかりだった。
そして、ついに溜まりに溜まったモノが爆発の音を立てた。
「あーーーーーーーーもう!!」
今まで聞いたことのないほどの突然の大声に、土方の肩が大きく揺れる。