誠姫
「ほんっとうに暇なの!!土方!!何とかしなさいよ!!」
「はあ!?何で俺が!?」
姫芽の驚きの発言に、土方の真っ当な返事。
姫芽は意味も無く髪の毛を結び直し、土方の近くへ数歩足を動かした。
「こんなに暇な時間が続くのは初めてだわ!少しくらい私の相手したらどうなの?」
「俺は仕事中だ!そんな時間ねーんだよ!」
「悠は仕事を放ってでも私が暇だと言えば相手をしてくれるわ!」
「そいつダメじゃねーか!」
「悠を悪く言わないで!!」
「あーも分かった分かった。頼むから静かにしてくれ」
これ以上の言い合いは不要だと分析した土方は、鬱陶しそうに姫芽を払いのけた。
「何よ・・・・」
ふてくされながら土方の背中を見つめる姫芽は、ぶつぶつと独り言ちり始めた。
「私が暇なのは全ては雨と土方が悪いのよ・・・ここに来て屈辱ばかり。皆私の立場を理解出来ていないんだもの・・・西園寺家の一人娘がこんな扱いを受けていいと思ってるのかしら、全く・・・」
そんな雑音でも土方の耳にはしっかり届いており、一度切れた集中力はなかなか元には戻らない。