誠姫
「お前ら……黙れ。切腹させるぞ」
寝ていないのだろうか。
土方のイライラはすぐそこで爆発してしまいそうだった。
「おーこわっ折角土方さんの仕事の邪魔になってるであろうどこぞのお姫様を引き取りに来たのに」
こんなに不機嫌な人を前に、沖田の楽しそうな口調は続く。
「姫芽ちゃんに仕事あげる」
姫芽の目線に合わせようとしゃがみこんで言った沖田に、誰よりも早く土方が反応した。
「は?」
新撰組屯所内はこんなでも、仕事となれば死と隣り合わせな危険なもの。
姫芽に出来ることなど何もないはず。
「あたしに……仕事?」
「うん。暇なんでしょ?」
「でもあたし、刀なんて触ったことないわよ?」
「平気。姫芽ちゃんにも出来る仕事だから」
どこか笑っていない満面の笑みの沖田に、二人は同時に首を傾げた。