誠姫



「おい、総司……」



先には「何考えてるんだ」とでも続くのか、土方は不安な表情をしていた。




「折角の女の子です。使えるとこは使っときましょうよ」



土方に不気味な笑顔を残し、そのまま再び姫芽へと目線を移した。



「姫芽ちゃんさ、これから僕たちにご飯作ってよ」



「え?」



「いい考えでしょ」と言うように口角を上げる沖田の表情は、いわゆるドヤ顔。



土方も珍しく沖田の意見に賛成なのか、感心していた。



だが、



「私、料理なんてしたことないわよ」



予想外すぎる返事。



二人とも声は出さず、表情だけで驚きを表した。



いや、声が出ないほど驚いたと言った方が良いだろう。



この時代、女が家事をするのは当たり前で、姫芽ほどの年となれば出来ないほうがおかしいのだ。




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