誠姫



しかし姫芽は西園寺家の大事な大事な一人娘で、おまけに高級感たっぷりの箱入り娘。



火なんて包丁なんて持たせてもらえるはずがなかった。



というより、料理など姫芽がしなくとも西園寺家専属の一流コックがいた。



「ごめんなさいね。私には無理だわ。キッチンにも立ったことないもの」



「キッチン・・・?」



「台所のことよ」



カタカナが通じず、面倒そうに日本語説明を入れる姫芽に、二人はポカンと間抜けに口を開けたまま、一時停止を図った。



「ま・・・まじかよ」



「お姫様って本当だったんだ・・・」



沖田の呟きに疑問を感じたが、姫芽はあえてのスルーを決め込んだ。



「別に教えてくれるんだったらしてもいいわよ」



「は?」



「料理!」



「すごい上から目線ですね」



「うるさいわよ」




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