誠姫
それはじめじめした雨の降る季節、雑音が止まない騒がしい時間となった。
「ああぁぁぁあああ!!違う違う!!それは砂糖!塩はこっち!!」
勝手場からひどく汗をかいたような声が姫芽の耳を直撃する。
そんな大声に驚き、肩を上げるのと同時に手に持っていた砂糖が衝撃で鍋の中へ大量投入された。
バサバサーという音が二人の耳に静かに響く。
「あ」
鍋に浮く白い粉。
そんな状況に、沖田は「勘弁」とでもいうように一生分のため息を吐いた。
「貴方が大声を出すから」
「いや、僕は塩を入れてって言ったのよ」
「これが塩だと思ったの!」
「砂糖と塩くらい分かるでしょう」
「同じ白い粉じゃないの。見分けなんてつくはずがない」
「つきます!つけて下さい!」