誠姫
「何なのもう・・・」
「無茶苦茶だわ」なんて台詞を吐きながら、姫芽は持っていた菜箸を放り投げた。
「もういいです。後は僕がやります。姫芽ちゃんは土方さんの邪魔をしてきて下さい」
脱力した沖田の声は完全に姫芽のやる気を消失させ、肩を落として勝手場を出た。
とそこに、ちょうど様子を見に行こうとしていた土方と遭遇。
曲がり角でぶつかるのを阻止しようと、お互いピクリと身を引いた。
「おぉ、もう終わったのか?」
「料理って案外難しいものなのね」
「何だ、失敗か?」
まるで自分の予想通りだと言わんばかりに、ニヤリと口角を上げてみせる土方に、姫芽は眉を吊り上げた。
「うるさいわね。料理なんてあんな細かいこと出来るわけないでしょ」
意外とあっさり負けを認めた姫芽に一瞬だけ驚きの顔を見せた土方は、次は柔らかな笑みを見せ、姫芽の頭に手を乗せた。
突然言葉のない不思議な優しさを与えられた姫芽は、顔を赤らめさせ下を向いた。
「な、何よっ」
「別に、ゆっくりでいい。お前の出来ることを見つけろ」