誠姫



広く、大きな家に一人でいることがどれだけ淋しいか、姫芽は知っていた。




「待って・・・どこ行くの?・・・一人にしないで」




初めての弱音だった。



不安だったのだ。



何故か、もう二度と帰ってこない気がした。




「何だ?お前らしくない台詞じゃねーか」




土方はこのしんみりとした空気を変えようと、陽気に「ははは」と笑った。




だが、姫芽の表情は優れない。




俯いて動かない姫芽を、土方は躊躇うことなく抱き寄せた。




「俺たちが帰った時、お前はただ屯所に居ればいい。すぐ戻るから」




そして、姫芽を残して土方は、新撰組は屯所を後にした。




背中の「誠」の字が月に照らされ、いつもより美しく見えた。




< 74 / 74 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

推しと乙女ゲーム展開になっていいはずがない

総文字数/4,231

恋愛(ラブコメ)22ページ

表紙を見る
初恋

総文字数/16,858

恋愛(純愛)47ページ

表紙を見る
天国の不動産

総文字数/41,122

ファンタジー114ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop