使者の黙示録
占い師は、自分から見て布の左上の部分を、己の左手で指差す。


「シスター、そこに右手を置いてくれないか」


そう指図されたシスター・マヤは、戸惑いをあらわにする。


「あの、私たちはお金が…」

「ああ、私が占いたいのだから、タダでいいよ」

(どうしよう)


なにか変なことに巻き込まれているのではないか、と思うシスター・マヤは

体も思考もそこで立ち止まり、占い師の言葉に躊躇する。


「大丈夫、なにも恐くはないよ。すぐに終わる」


不安が拭えないシスター・マヤだが

占い師の澄んだ瞳には、人をだます意図は感じられない。

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