使者の黙示録
それにしても上手く考えたものだと、男は思う。


「まさか宗教を名のる者が、自分の団体を隠れみのにして裏社会に手を染めていようとはな」

「誰も知ることはありませんわ。関係者以外に、表社会の人間は」


ある意味で、マザー・アミコほど白い修道服が似合わない女性もいない。


そんな彼女は、一般人が自分の正体を見抜けるわけがないと

表社会に生きる人々に対して、特に警戒心を払うことはなかった。


ところが――

この日、裏社会に関わることのない人間でありながら

ふつうの人とは違う目で、マザー・アミコを見ていた男がいたのである。

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