キミは嘘つき蝶々
とは言え。

森口を引き留めるために、何をすればいいのか。

正直俺には皆目見当もつかなかった。

説得すりゃどうにかなるって問題でもないだろうし。

森口が現れたり消えたりする詳しい事情もよくわからない。

それでも、ただ、手をこまねいて静観しているワケにもいかない。

俺はまだ、森口に何も伝えていないし

キスひとつ出来ていない。

あんなこともこんなこともそんなこともしていない。

それで、あっさり目の前から消えられたら、このやり場のない欲求はどこへ向かえばいいんだ?

本人には絶対にぶつけられないが、それなりに切実な悩みを抱えながら、俺は昼休みのチャイムと同時に姿をくらませた森口を探していた。

ここだとあたりをつけて図書室の目立たない読書スペースをのぞく。

椅子に腰かけて本をめくる白いブラウスの後ろ姿を見つけ、ホッと息をついた。

「森口」

名前を呼ぶと、彼女はゆっくり振り返り俺を見上げた。

本を閉じて立ち上がる。

まるで俺が来ることを見透かしていたように、彼女はいつになく落ち着いて見えた。




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