キミは嘘つき蝶々
しばらく沈黙が続いて、静かな準備室に俺の荒い息だけが響いた。

「………す、好きっていうより………」

ようやく人心地ついた俺は、無言のままじっと見つめてくる居心地悪い夏の視線から顔をそらし、口を開いた。

くそー何で他人にこんなこと言わされなきゃならないんだ。

ただでさえ、この俺様が森口ごときに片思いなんて、汚点としか言いようがないのに。

イライラと乱暴に前髪をかきあげ、ため息を漏らす。

「………まあちょっと変わってるから、興味があるって言うか?」

ギリギリ、プライドを保てる範囲の言葉でそう答えると

「………そうですか」

夏は急に意気消沈したように、肩を落とし、暗い顔をしてうつむいた。

な、なんだ?

なんで夏がそんなに落ち込んでるんだ?

「………だったら」

さらりと流れた、夏の長い髪が白い頬を覆う。

「もう、カンナちゃんの周りをウロウロするのは、止めてください」

「は?」



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